はじめてなのに、定宿きぶん

温泉宿ロビー 山あいの温泉宿

美しい名前に惹かれて選んだその湯宿は、周囲の自然に溶け込むようにひっそりと佇んでいた。玄関を入ったとたん広がる一枚の絵のような五百川の渓流美。落葉樹が重なり合う端正で素朴な景色は、秋のあでやかさを想像させる。絶景の特等席になるだろうラウンジで、ふたりしばし夢見るようにその景色を思い描いてしまう。

開湯伝説にも登場し、京の賀茂川から数え東方へ500本目の川とされる「五百川」。磐梯熱海温泉は、この渓谷のせせらぎに沿って広がる風情あふれる温泉郷。

五百川
客室客室 渓流を望む和のくつろぎ、静けさに包まれた大人の至福

案内された部屋は落ち着きあふれる純和室。大きな窓の外には夕暮れに眠るようにかすむ山の稜線が見える。さらさらと涼やかなせせらぎの他に、何も聞こえない旅の我が家。気さくなお宿の方の呈茶にほっとひと息。明るい時間の露天風呂も格別ですよ、のおすすめに期待は一層高まる。

ブナ原生林の中に湧き出た沢水「深沢の名水」を取水している磐梯熱海温泉の水道水は、自然のミネラルを豊富に含むおいしい水。宿ではこの水を料理に使う他、湯上り処でも名水サービスを行っている。

深沢の名水

古く京の姫宮の病を平癒し、美しさに磨きをかけたという開湯伝説にちなんだ温泉化粧水。基礎化粧水としてはもちろん、化粧した上からも潤いを補給できる、女性にうれしい1本。

温泉化粧水
池に囲まれ佇む屋形船お風呂 景色の一部になってひたる湯ぜいたく

宿の自慢でもある庭園露天風呂は川に突き出した湯殿棟にあり、風情ある木造の渡り廊下で大浴場と繋がっていた。思わぬ寒風に足早に急ぐ屋形の湯船。肩まで身を沈めると、まるで川に浸かっているかのような水の景色が広がる。平安の貴人もこうして、四季の景色の一部となったのだろうか。源泉掛け流しの湯はさらりと肌になめらかで、湯あがりは老若男女問わずすべすべと、美人になるのだと言う。

清冽な水と旨い米が育てた福島の地酒が楽しめる利き酒セットは酒党ならずとも、うれしい趣向。

福島の地酒

五百川は、かじか蛙の生息地。春から夏の夜にかけ美しい鳴き声を聞かせてくれる。

五百川

ラーメン処「らんらん」では宿オリジナルのラーメンもいただいた。

ラーメン処「らんらん」
水いらずで過ごす宿じかん館内案内 PM6:00

磐梯熱海温泉は、その地の利から里山はもちろん、海の幸も豊富。豊穣の風土がもたらす恵みを手をかけすぎず風味豊かにをこしらえた夕膳は、作り手の真心を感じる素朴な味わい。季節との語らいをたっぷり五感で堪能したあとは、湯の音色とせせらぎの子守唄を聞きに、また月明かりの露天風呂へ。

水いらずで過ごす宿じかん周辺観光 蓬山遊歩道

早起きしてひと風呂浴びたあと、爽やかな朝の空気に誘われるまま宿から約5分程歩いた場所にある「蓬山遊歩道」へ散歩へでかけた。整備された遊歩道を200m程歩くと、樹齢300年を超える堂々たるケヤキの巨木が私たちを待っていた。辺りを取り巻くマイナスイオンに、体が深呼吸しているのが分かる。軽装でも楽しめるケヤキの森は朝の運動にちょうどいいコース。

約50本を越す巨大ケヤキが群生しているケヤキの森。見頃は4月から5月の新緑と、10月から11月の紅葉シーズン。早春には鮮やかな山野草も足元を賑わす。入口には足湯もあり、地元や観光客の社交場となっている。

巨大ケヤキ
多年草 ケヤキの森

日当たりの良い雑木林等に自生するラン科の多年草、金蘭。春から初夏にかけ金色に輝くように咲くその黄色い花姿は、古くから人々に愛され、その心を癒してきたと言う。一方、金蘭には“本当に心の通い合った友人”という意味もあるらしい。自然に寄り添うような宿の佇まい、そしてもてなしにその想いを見た気がする。帰り道は、次に訪れる季節の相談になるだろう。

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